桜の下で会いましょう
「今回の事で、そなたが如何に大事か、痛い程分かった。やはり、私の元へ入内してくれまいか。」

依楼葉は、体を細かく震わせた。

「申し訳ありません。」


また、駄目だったか。

帝が依楼葉の手を、離そうとした時だ。

太政大臣の言葉が、頭を過った。


- 頼むのではなく、はっきりと伝えるです -


帝はゴクンと息を飲むと、今度は両手で依楼葉の手を握った。

「主上……どうか、お許し下さい。」

「いや、許さない。」

依楼葉と帝は、互いに見つめ合った。

「和歌の尚侍。もう私は待てない。桜の季節になったら、我が元へ入内せよ。」

その真剣な目に、依楼葉は息をするのも忘れるくらいだった。


すると影の方から、すすり泣く声が聞こえてきた。

依楼葉が影の方を見ると、それは父である藤原照明だった。

「父上様!」

「関白左大臣か……」

ほっとした二人の前に、藤原照明が泣きながら来た。
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