運命だけを信じてる
「確かに今日、初めて僕たちは出逢ったけれど。前山さんに運命を感じたんだ」
運命?
そんなロマンチストな答えが返ってくるとは想定外だ。
「どこに運命を感じたのですか?」
そりゃぁ私だって昔は運命の出逢いや運命の恋を本気で信じていた。どこかにいる運命の彼といずれ幸せになれるのだと胸を馳せていたけれどーー29歳にもなってまだその"運命"は訪れていない。
「新入社員で年下の僕に敬語を使ってくれるところも、この髪のことを触れないところも、あの丁寧すぎるマニュアルも…惚れるには十分な要素だと思いますよ」
「ごめん、全く理解できないです。それに昼間、うちの課の人に髪色のことを聞かれて、地毛ですって小牧さん答えてましたよね?」
好奇心丸出しの質問にひとつひとつ丁寧に答えていて、それを隣りで聞いていたから間違いない。
「地毛だなんて、誰も信じてなかったと思いますよ。前山さんを除いて」
「…染めてるの?」
「ええ」
「……」
ハーフ設定が崩れ落ちる。
純粋な日本人に生まれて、なぜ鼻が高いの?なんでそんなにスタイルが良いの?
ひがみのような質問が脳内を駆け巡り、結局、口を閉ざした。
もう帰りたい…。