運命だけを信じてる

帰ってしまおうと立ち上がったタイミングでビビンバが運ばれてきた。美味しそうな香りはするが、今は一刻も早く家に帰りたかった。


ベッドにダイブして、今夜のことは忘れてしまおう。おかしな冗談に取り合っていられるほど、社会人は暇じゃないんだよ。


「それで、前山さんは彼氏いますか?」


立ち上がった私にスプーンを差し出してきた小牧さんは帰ることを許してはくれないらしい。



「いません」


とりあえずスプーンを受け取る。


「食べたら解放するよ。元々30分という約束だったし。冷めないうちにね」


「……」



あなたのせいで食欲がなくなりました!





「それじゃぁ僕と結婚しませんか?」





ーー結婚しませんか?


ずっと言われたかった台詞がいとも簡単に聞ける日がくるとは驚きだ。



「しません」


けど、あなたの口から言われたかったわけではない。好きな人に、言われたかったんだよ。



「食べたら帰りますから!いただきます」


小牧真矢ーー私はあなたのことが少しも分からない。何も知らない相手に結婚を申し込むような謎めいた男。いや、私をからっているだけだろうけど、それでも意味が分からない。

仮にも私はあなたの教育係で明日から気まずくなるとは思わないわけ?


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