運命だけを信じてる

目が開かれ、茶色の瞳とかち合う。

家に帰って一息できたのかな。目元のクマが薄くなっていた。



「新商品提案プレゼン。覚えてますか?」


こくりと頷く。
東課長が星崎課長の発表内容を事前に入手し、あたかも自分の提案であるかのように登壇したあの日のことは忘れられない最悪な思い出だ。


叩かれた頰が、なぜかひきつった。


「あのプレゼンは会議室に居なくても、社内のネット環境にあるパソコンから社員がアクセスできるようになっていました」


そうだったよね。
だから私たちも自席でその発表を見守っていた。


まぁ結局は見ていられなくなって、会議室に駆け込んでしまったけれど。



「僕も見てました。"好きな人ができたから、真矢に味方となって欲しい"そう言われて、応接室で無理矢理、飛鳥に見せられまして」


シンヤ。
飛鳥さんは小牧さんのことをそう呼んでいた。

私は一度も呼べなかったな…。



「あの一件を見たら、前山さんは星崎課長に好意を寄せていると誰もが思います。前山さんの人となりが少しは分かる今ならーー、正義感に駆られてとった行動とも思いますが…前山さんのことを初めて見たあの日は、正直、恋って凄い原動力だと思いました。そして同時に、」


小牧さんは目尻を下げて困ったように笑う。


「僕もこんな風に真っ直ぐに愛されたいなって、羨ましくもなりました」


小牧さん…。

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