運命だけを信じてる
「そしてプレゼンから1ヶ月後、飛鳥に頼まれました。星崎課長が管理課に異動するにあたって、前山さんも一緒に異動できるよう社長に説得して欲しいと。僕たちは血の繋がらない4人兄妹で、東野課長が次男、僕が三男なのですが、社長ーー父は、昔から僕の言うことには耳を貸してくれるので…僕は交渉しました。あのプレゼンで、上司を庇う前山さんも、役員の前で敢えて部下に手を上げた星崎課長も。貴重で大切な人材である旨を伝えました。僕は真実を伝えたまでで、それ以上のことはしてませんよ」
…知らなかった。
社会のルールもよく理解せずに会議室に飛び込んだ無謀な私の言動を小牧さんに見られていたなんて。
恥ずかしい。
「…それだけじゃないだろう」
黙って聞いていた星崎課長は小牧さんを見た。
「社長は前山の異動を認める代わりに、小牧にアズマネクスト商事に戻るよう交換条件を出した。小牧が内定を辞退した我が社に、戻るように命じられたんだ」
小牧さんの小さな溜息が聞こえた。
「…飛鳥はお喋りですね」
「俺の力不足で前山の人事に口を出せず、小牧の世話になり、そしておまえは交換条件通り、アズマネクスト商事に入社した。俺は、おまえから自由を奪ってしまった。申し訳な…」
「星崎課長のためではないですよ。僕は前山さんのために動いただけなので、謝らないでください」
頭を下げようとした星崎課長を止めて、小牧さんは髪を掻き上げながら言った。
「惚れた女のために、したことですーー後悔はありません」