運命だけを信じてる

私たちの出逢いは、エレベーターホール。

教育係として新人の彼を待っていたその場所が初対面だと、疑いもしなかった。


「はじめまして、小牧真矢です」
その第一声に不自然さはカケラもなかったから。



最初は好きだの付き合ってだの言われて、からかわれていると思った。私の反応を見て楽しんでるんだってーーでも、そうじゃなかった。



「どうして教えてくれなかったの…」



それが今、一番聞きたいことだった。


だって私が管理課に異動できた恩人に、お礼すら言えていない。



「話すつもりはなかったです。僕はただの新人としてあなたに、管理課の皆さんに受け入れて欲しかったから」


「だったら、おまえが東家の人間だと知れ渡った時点で話してやれば良かっただろう」


口を挟んだ星崎課長に、小牧さんは小さく笑う。



「星崎課長に夢中な前山さんに、何を言えと?そこまでズルい男になりたくないです」



小牧さん…。



「明日も早いですし、この辺で終わりにしませんか?話すことはもうないです」


そう言って小牧さんは立ち上がった。帰れということだ。

この状況で帰るの?
心の中がもやもやとしていて、まとまりがつかない。


「俺は帰る。もう少し、後5分だけでいいから、前山と居てやってくれ」


星崎課長の気遣いが有り難かった。

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