運命だけを信じてる

日曜日。
ハンバーグの焼き加減を確認しながら、買ったばかりの可愛いお皿を眺める。


「クリスマスイブね、好きな人を家に連れて来ても良いかな?」


「あなた好きな人いたの?」


背後に立ち、私の手際の悪さにクレームを入れつつ見守ってくれていた母は驚いていた。


最近は小牧さんの誘いもなく、休日は家でまったり過ごす娘にも恋バナのひとつやふたつあるんだよ。


「会社の人。それでその人、たぶん社長になるの…」


「社長?立派な人なのね…そろそろ良いんじゃない」


母の指示通りハンバーグをフライパンからお皿に移し、胸の内をさらけ出す。



「私、社長夫人になれる器じゃないよね」


それなりの大学を出て、良い会社に就職できたという自負はある。それでも一般家庭に育ったどこにでもいる平凡な人間だ。社長夫人としての教養は不足しているし、至らない点ばかりだろう。



「付き合ってるの?」


「ううん」


「まぁ脈ありだからそういうこと考えてるんだろうけど、どこの家にお嫁に行っても大変なものは大変よ。その覚悟と、相手を思う気持ちがあれば試してみてもいいと思うわよ。このまま未婚でも、離婚しても、世間の目が冷ややかなことは同じだし」


「それ、可愛い娘に言う台詞?」


早速、ハンバーグの味見をする母を睨む。

はっきり言ってくれるからこそ、こっちも気兼ねなくいつまでも実家暮らしで居れるけれど。
三十路目前にして、さすがに心配してるよね。


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