運命だけを信じてる
「美味しいっ。これ全部、あなたが作ったのですか?僕のために?」
「はい。小牧さんのために作りました」
良かった…。
並べた料理に小牧さんは嬉しそうに口をつけてくれた。
「僕のお願いを叶えてくれてありがとうございます」
「うん。これからもっと上手くなります」
「十分、美味しいです。本当に最高。今度は僕にも教えてください」
良かった…こんなに褒められるのなら、もっともっと頑張らないとね。
向かい合ってテーブルに着き、幸せな時間を堪能する。
「母は弁護士で僕に料理を作ってくれる余裕はなかったので、家庭の味に飢えていたのです。でも母はその代わりに多くの人を救ってきて、文句は言えないですね」
「お母さん、弁護士なんですね」
やっと、小牧さんの口から聞けた…。
「でも僕が小学生の時に、僕を置いて家を出て行きましたけど。いい母親ではなかったですが、その仕事ぶりだけは尊敬しています。僕の高校時代の友人が濡れ衣を着せられそうになった時、母の弁護で助けられたこともありました。アズマネクスト商事の前は、その友人のアパレル会社で働いていました。正社員じゃなかったし、人間関係も色々ありましたが…髪も、その頃には金色で」
「髪…黒に染めて良かったのですか」
「少しは真面目な男に見えるでしょう?あなたを幸せにしたいという俺なりのケジメです。それにいつまでも反抗期でいるわけにもいかないですしね」
ハンバーグを美味しそうに頬張りながら、小牧さんは笑った。
「まぁあなたに良い返事をもらえるかは分かりませんけど…」
「私の心は決まりました」
「そうですか…」
小牧さんは箸を置いて、頷いた。