運命だけを信じてる
隣りに置いた紙袋を引き寄せた小牧さんは、中からより小さい紙袋を取り出した。
それは今日、私がつけている指輪と同じお店のものだった。
「指輪、つけてくれているのですね」
「はい。これが、私の答えです」
「それは僕の彼女になって欲しくて贈ったものです。そしてこれは、僕と結婚して欲しくて買いました」
紙袋から出てきたケースには、シンプルな指輪が収められていた。
「前山さん、僕と結婚してください」
真剣な瞳と、彼の決意である黒髪を見る。
結婚…まだきちんと付き合ってもいないけれど、最初から、出逢って間もない頃から小牧さんは
『それじゃぁ僕と結婚しませんか?』そう言ってたっけ。
あの頃は冗談だと、からかわれているだけだと思っていたけれど。小牧さんは何年も前から私のことを知っていてくれたんだね。
「僕はあなたでないとダメなんです。父や環境のせいにしてやさぐれていた僕に、真っ直ぐ生きるきっかけをくれたあなたを手放したくない。星崎課長を庇って会議室に乗り込んだあなたを画面越しで見たあの日から、僕の中でどんどんあなたの存在が大きくなりました。あんなに嫌がっていた父親のコネを使って、同じ管理課に入って。でもまともな恋愛をしたことがなかったから、さりげなく近付く方法も分からず。星崎課長の存在に焦って、順番を間違えました…それでも付き合って欲しい想いを通り越して、あなたと結婚したいです。ずっと一緒にいたいです」
こんなに饒舌な小牧さんを見たことがない。
最後は息切れしたかのように、コップ一杯の水を飲み干した。