運命だけを信じてる
お皿洗いを手伝ってくれた小牧さんにソファーに座るように促して、紅茶を淹れる。小牧さんの手土産は良い香がする茶葉だった。
「ありがとう」
マグカップを手渡すと、柔らかい笑みで応えてくれた。
「小牧さんは雲田夏帆さんの前だと、よく笑いますよね」
「そうですか?」
無意識だったようで、首を傾げた。
「微笑みというより、破顔してますよ。夏帆さんには心を許していると言いますか」
隣りに座り、小牧さんの反応を伺うも腑に落ちない様子だ。
「確かに夏帆さんは僕にとっての第2の母であるし、何よりあの人は元旦那、東社長のことを面白おかしく語るのです。うちの母の前では父の話は禁句だから、平然と思い出を語る夏帆さんが新鮮で。父の意外な一面を話してくれたりして…」
「凄い方ですね、夏帆さん。私もいつか小牧さんを満面の笑顔にさせられるよう、頑張りますね」
「僕はあなたに救われました。頑張らなくても、あなたの隣りにいる僕はいつも心から笑っていますよ」
マグカップをテーブルに置いた小牧さんは私の右手を優しく包んでくれた。
あやすように背中も撫でてくれる。
「さすがにこれ以上は、ヤバいかな。いつご両親が帰宅するかも分かりませんから。いくらなんでも裸でご対面は気まずいですよね」
「はい?」
「第一印象は大切ですからね」
頰を撫でられる。
優しい撫で方がくすぐったくで、身をよじればーー
頰を包む手に引き寄せられ、小牧さんとの距離が縮まる。
唇が触れる一歩手前で、目が合った。