運命だけを信じてる

ネクタイを緩めて栄養ドリンクを煽る逢瀬先輩はお酒が大好きで、大抵二日酔い。だけど仕事上でミスをしたことはないし、遅刻どころか会社を休んだことがない。


私には見習えないところばかりだけど、尊敬する先輩だ。


「私、小牧さんのOJTを上手くやれるような気がしなくて…逢瀬先輩のようにきめ細かく、それでいて無駄のない指導ができるのでしょうか」


この人だけには、いつでも弱音を吐いて来た。最初は早く家に帰りたいと思っていた彼との2人飲みも、次第に居心地の良い時間に変わった。たくさん愚痴を聞いてもらい、彼の説教臭い話を有り難く受け止めてきた。


「なに?使えない奴なの?」


「いえいえ!教える側の問題です」


「毎晩遅くまで、奴のためにマニュアル作ってやってたじゃん。俺があげたやつをコピーして渡せば良いって言ったのに。おまえに足りたないのは良い指導法でなくて、自信だよ」


「自信ですか…」


「俺が29歳の時より、おまえはしっかりしてるよ」


「ちょ!逢瀬先輩!大きな声で年齢を言わないでください!」


29歳。
彼氏なしの私は崖っぷちだ。


< 26 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop