運命だけを信じてる

大きな目と、高い鼻。
整った輪郭に、染めているはずなのに傷んでいない綺麗な髪。

長身で、スーツがよく似合って。

仕事だって、覚えてしまえば私より絶対に優秀な社員になる。近い将来、彼に役職が就くことを確信している。


そんなハイスペックな男性から告白されて、ときめかないこの心は凍っているのではなく、ただ星崎課長に一途なだけだ。


私は星崎課長だけを、愛しているのだ。


「好きな人って誰ですか?」


タイミングよく運ばれてきたコーヒーを受け取った小牧さんは短く聞いてきた。


「小牧さんの知らない人です」


本当のことは教える必要はないよね。
仕事がやりにくくなっても困るし。


尊敬する上司。
小牧さんの目に星崎課長はそう映ったままでいて欲しい。私なんかのことで視野を曇らせてはいけない。


「僕の知らないその誰かに、前山さんは告白しました?付き合ってはいないですよね?」


「想いは伝えられていません」


私には小牧さんのような勇気はない。
何年経っても部下と上司という遠い距離のままだ。

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