神志名社長と同居生活はじめました
「お帰りなさい」

「ただいま」

社長が玄関で靴を脱ぎ、部屋に入った後、彼が脱いだスーツの上着を私が受け取る。……すっかり慣れてしまった一連の流れだ。


すると、社長が私の顔をじっと見つめ、そしてゆっくりと口を開く。


「今、擦れ違った。君の元彼の、牧田君」


その言葉に、ギョッと目を丸くさせてしまった。
そ、そうか、ちょうどそういうタイミングだったよね。


「あ、向こうは俺には気付かなくて、雅が気にするような噂が立つことはないから安心して」

「あ、はい。その心配よりも、私的にはその、社長に誤解をしていただきたくないと言いますか」


誤解って何の？　と、疑問を私に投げかけながらも、社長はクスッと笑う。


「ご、誤解してないならいいです。これ以上は言いません」

「いや、雅の言う誤解っていうのを誤解しているかもしれないから、言って？」

「だ、だからぁ……」

ああ、自分で言うとなるととっても恥ずかしい。
社長は優しいけど、多分Ｓってやつだ。


「も、元彼とコソコソ二人きりで会ってたとかじゃないってことです！　変な用件で突然押し掛けられちゃっただけで……」

「うん、そうだと思った。だって雅は俺のことを好きでいてくれているから」

「……っ」

顔がポポッと赤くなってしまう。

やっぱりからかってた！
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