神志名社長と同居生活はじめました
社長とは、あれきり何もないまま数日が経った。
メッセージも電話もない。
夜になると、もしかしたら訪れてくるかもーーなんて淡い期待も、この数日でそろそろなくなってきた。
やっぱり、ちゃんと話したい。
そう思って何度も家で携帯を握り締めたけれど、エントランスで見掛けたあの女性が脳裏をかすめて、それが出来ずにいた。
まさか本当の本当に婚約者?
何か事情があるにしても、あんなに美人が社長の側に日頃からいるなら、私なんか……と尻込みしてしまう。
でも、このままじゃ何も変わらない……。
ある日の昼休み。
今日は社員食堂で一人、お弁当を食べていた。
ちょうど昼時で賑わい始める食堂。
混雑のピークの少し前にここへ来た私は、一番奥の六人掛けのテーブルに一人、ゆったりと座っていた。
すると。
「相席いい?」
座ってきたのは、なんと尚だった。
定食のプレートを持って正面の席に座る尚に向かって、露骨に嫌な顔をしてしまった。
尚のことが嫌いになったという訳ではないけれど、今尚と一緒にランチする気にはなれなかった。
「わ、私もう食べ終わったから行くね」
そう言って席を立ち上がろうとしたのだけれど。
「待てって。照れるのも分かるけどさ」
「照れてはいない……」
「告白の返事、聞かせてくれよ」