神志名社長と同居生活はじめました
「前も言ったじゃん。掛けてない方が可愛いって」

社長もしっかり覚えているご様子。
でも、今そんなこ言われると思っていなかったから、分かりやすく動揺してしまう。


「な、何言ってるんですか、もう!」

「あ、眼鏡を掛けている女性を否定する意図はないよ。寧ろ、眼鏡美人にはだいぶそそられるね。
でも、雅は掛けてない方が似合うと思う。コンタクトにすれば?」

「変なこと言ってないで、眼鏡返してください!」

そう言って社長に向かって右手を伸ばすも……


「駄目。これは今日一日、俺が回収する」

社長は私の眼鏡を自分の上着の胸ポケットに入れてしまう。


「えぇ⁉︎」

「掛けてなくても見えるんでしょ?」

「見えないことはないですが、視力が低いことには変わりないので、眼鏡がないと不安です」

「じゃあ、今日は一日、俺がずっと手を繋いでいてあげる」


え? という私の言葉をかき消すように、彼は再び車を発進させる。気付いたら青信号になっていた。



一日手を繋いで……? きっと冗談だよね?


でも、遊園地で一日社長と手を繋いで過ごせたら……とても幸せだろうなあ。
< 83 / 125 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop