Toxic(※閲覧注意)
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不倫だから、と一度は身を引いたのに、結局彼に抱かれてしまった。

私は「どうしても」彼が欲しかったのだ。

理性が欲望に勝てない自分のだらしなさに、つくづく呆れる。

自由をこよなく愛するのは、我慢できない弱さでしかない。

だから恋愛も結婚も、今まで何もうまくいかなかったのだ。

そんなこと、わかっている。

狩人気質なのは、気に入ったものを「どうしても」手に入れたくなるから。

追われると逃げるのは、私の「どうしても」の気持ちに火がつかないから。

手に入れると飽きるのは、「どうしても」がなくなってしまうから。

私の原動力はいつだって、「どうしても」という強い欲求なのだ。

大和に初めて会ったあの日──。

もし彼が「私を落とす」なんて言わなかったら、私は彼を落とすべく、いつものように狩りのゲームを始めていたに違いない。

大和のことを、一目で気に入っていたから。

元来熱しやすい私は、気に入ったらすぐに夢中になる。

だからこれは、大和に落とされること前提で始めた、ただのラブゲームだった。

どう落としてくれるのか、楽しみたかっただけだ。

そして冷めやすい私はいつも通り、手に入れたら満足して、しばらくすると興味がなくなっていたかもしれなかった。

なのに、不倫なんて……。

こんなはずじゃなかったのに。
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