Toxic(※閲覧注意)
「あれ?夏目さん、寿司苦手?」

「いや、むしろ好き。でも花村って!」

私が語気を強めたので、柴宮はさすがに理解したようだ。

「ご褒美だよ」

彼は言った。

瞬時に『ご褒美をあげる』という彼の言葉を思い出す。

「ああ、言ってたご褒美って……」

彼が言っていたご褒美って、花村のことだったのか。

確かに、これは素敵過ぎるご褒美だ。

「ん?違うよ。これは馬車馬のように働いてる俺らの、自分達へのご褒美」

「へ?」

「夏目さんにあげるって言ったご褒美は、ちゃんと他にあるから、楽しみにしてて」

柴宮はそう言って、目を細めて微笑んだ。

その笑顔と声があまりに色っぽいから、くらくらと目眩がした。

……ああ、そういえば、この人に会うの3週間ぶりだっけ。

会わない間何度も思い出した、私の記憶の中の彼なんかより、実物は数十倍いい男だ。

思わず見とれてしまうくらいに。

「ねえ、夏目さん」

「な、なに?」

見とれていたのがバレたのかと思い、慌てて視線を外す。

「……俺に、めちゃくちゃ会いたかったでしょ」

ほんのりと香るラ・フランス。

軽く痺れるようなキスの感触が、まだ唇に残ったままだ。
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