Toxic(※閲覧注意)
柴宮大和は自信満々な笑みを浮かべて、こちらを見ている。

その顔を見て、私はようやく全てを悟った。

きっと、全ては彼の計画通り。

この3週間は、壮大な放置プレイだったのだ。

確実に私を仕留めるための。

……ああそうか。

私は完全に、思い違いをしていた。

私を落とすなんていうから、彼が私を追いかけてくるのだと思っていた。

忘れていた、雄のライオンは、狩りなんてしない。


「……別に」

「別に会いたくなかったし、とかいらないから」

全然会いたくなかった……そう言ってやろうと思ったのに、被せ気味に話し始めた柴宮大和の声に遮られてしまった。

「そういうのいいって、俺言ったよね?」

ちょうど横断歩道の赤信号に引っ掛かって立ち止まった時、彼はそう言った。

真っ直ぐ向けられた視線に、なぜかゾクッとした。

「それとも、ほんとに会いたくなかった?」

「…………」

……ムカつく。

私は、誰にも束縛されず、自由に狩りをする射手座、ハンターなのに。

心臓に立てられた爪が、喉元に刺さった牙が、どうしても抜けない。

「ねえ、夏目さん」

「……………いの」

「なに? ちゃんと言って」

あー、ほんっと、生意気な王様!

……でも、悪くない。

「バカじゃないの? 会いたくなかったら、このくそ忙しい時にデートなんかするわけないでしょ」

私がしかめ面で吐き捨てるように言えば、

「よくできました」

百獣の王はとびきり甘い声で、極上の笑みを浮かべた。
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