Toxic(※閲覧注意)
「でもだからって、どうしてろくな恋愛してないって話になるの?」

「だって夏目さんは、相手の中身ちゃんと見ないわけでしょ? 毎度顔で選んで『こんな人じゃなかったのに』なんて言ってそう」

まるで私の半生でも見てきたかのように、的確に言い当ててくる。

「いや、確かにそうだけど……それは、相手が豹変するからで」

私の歴代の男達はみな、付き合い始めた途端に束縛魔と化すのだ。

「だから。中身見てないからそうなるんでしょ」

柴宮は淡々とそう言うと、日本酒のお猪口をくいっとやった。

私もつられて、手元のお猪口を口に運ぶ。

彼の辛辣な言葉と同じくらい辛口だ。

「それに夏目さん、ハンター気質だから、落として手に入れたら相手に興味なくしそうだしね」

「……まあ、そこも否定はしないけど」

熱しやすく冷めやすいのが、射手座の女だ。

「だろ? 全力で惚れさせといて、急に冷めた態度取るんでしょ。そんなの執着しか生まない」

「…………うう」

的確過ぎて言い返す言葉もない。

「ほらね、ろくな恋愛してない」

それにしても、何も話していないのに、何故こうも見抜かれてしまっているのか。

「てか、夏目さんって、本気で好きになったことないでしょ」

私のお猪口に日本酒を注いでくれながら、柴宮が言った。

「……そういう柴宮さんこそあるの?」

「俺?」

柴宮は聞き返しながら、目の前に置かれたぷりぷりの牡丹海老に手を伸ばした。

それをぱくりと一口で食べてから、

「今に決まってるでしょ」

そう言って、思わず心拍数が上がるほど熱っぽい視線を、こちらに向けた。
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