Toxic(※閲覧注意)
花村のお会計は、柴宮大和の笑みと同じくらい心臓に悪かった。

私も半分出すよ、という言葉を一瞬躊躇うほどに。

「俺が誘ったんだから、俺が出しますよ」

結局、柴宮がカードで払ってしまった。

こんな高いもの、ご馳走になってしまっていいのだろうか。

次回は私が全額出そう。

……あれ、次回?

私、次回もデートする気満々だ。


花村を出て、繁華街を歩き始めた。

ほどよく日本酒が回って少し火照った頬に、春の夜風が気持ちいい。

柴宮と、そういえば何歳なの?なんて今更な話をしながら、これはどこに向かっているのだろう、とぼんやり考える。

花村で思ったよりのんびりしていたらしく、腕時計を見れば時刻はそろそろ22時。

柴宮はどういうプランでいるのだろうか。

まさかこのまま、ホテルに直行?

でもまあ、もう一軒軽く飲んで、それから……というパターンが濃厚だろう。

次は絶対落とす、と宣言された上でのデートだし、出会い頭にキスまでされているわけだから、きっと今晩、私は彼に抱かれるのだ。

もういい大人だから、そんなことは承知の上だ。

いい大人、と言えば、柴宮は今年34だと言った。

見積りより6、7歳上だったことに驚いたが、彼の妙な落ち着きっぷりも納得だ。

ちなみに私の年齢は言っていない。

「俺と同じくらいか、1、2こ下でしょ?」

そう言われてしまうと実年齢を言う気にはなれなくて、「私の方が上だから」とだけ答えた。

「別に何歳でもいいや。俺はもし夏目さんが50歳だとしても、絶対口説くよ」

こいつがホストやったら、きっとマダムキラーになるんだろうな。
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