Toxic(※閲覧注意)

──だからもう、会っちゃいけなかったのに。

会えばこうなることはわかっていた。

そもそも、私はそんなに意思の強い人間でも、清廉潔白に生きられる女でもないのだ。

だからあの時、自分から身を引いたのに。

ベッドの上、すでに一糸纏わぬ姿で、大和と呼吸もできないくらいに激しく唇を求め合いながら、ぼんやりとそんなことを考える。

しーんとした真っ暗な部屋に、布団の擦れる音とちゅぱちゅぱと唇を合わせる音がやけに響く。

それがすごくいやらしくて、けれどひどく切なくて、なんだか泣きたくなった。

奥さんがいるってわかっててこんなこと、絶対にしちゃいけない。

けれど、こうしている間だけは、大和は私のもの。

背徳と独占欲、2つの相反する気持ちは、どちらも私をひどく興奮させる。

彼が欲しくてたまらない。

不倫はいけないこと……そんな偽善的なモラルなんて、自分の強い欲望の前では簡単に崩れ去ってしまう。

奥さん、ごめんなさい。

絶対に、あなたから彼を奪ったりしないから。

ほんの時々でいいから。

大和を貸してください。


……ごめんなさい?

彼のモノが欲しくて、こんなに股を濡らしているくせに、何をいい子ぶってるのだろう。

ごめんなさい? 本当はそんなこと、全然思っていない。

掴まえておきたければ、それこそ首輪でもつければいい。

そんな風に思う汚い自分が許せなくて、また泣きたくなった。
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