砂時計が止まる日
新垣はパジャマ姿でブランケットを羽織って2つのぬいぐるみと一緒に部屋の隅のベッドに座っていた。
その横にはサイドテーブルがあり、ふわふわと白い息を吐く小さな加湿器とそれと大きさがさほど変わらない砂時計が置かれていた。
「今日も、そこに置いてるんだ。」
「ないと、いやなの。」
新垣は静かに自分の意志を主張した。
彼女にしては珍しい。
「この子、昔会った男の子にもらった砂時計、いつまでも大事にしてるの。」
「これはっ!私の命なの。
これがあるから私は頑張れるの。
これがなかったら、私は今のようにはなれなかった。」
彼女が大切そうに砂時計を手に取る。両手で持てば収まるほどの大きな砂時計だ。
上から下にかすかに白い砂が落ちていくのが見える。
「それって何分ぐらい落ちるの?」
「45分の砂時計。」
彼女の笑顔に僕は少し頷くことしかできなかった。
だって、こんなに弱々しい姿、初めて見たんだ。
いつもはもっと...そう、覇気がある。
「なるほど、人が集中できるのは45分、ってよく言うし。」
僕の言葉に彼女の目が大きく開いた。
「ごめんね、まさか来てくれると思ってなくて何も用意してない。」
新垣は片眉を下げた。
「どうせ私が来るのはわかってたでしょ。」
「もちろん。
何年の付き合いだとお思いで?」
荒木は新垣の普段との違いは僕の何倍も気付いているはずなのに、彼女はそんな素振りを全く見せずに笑っている。