毎日、失恋。
シンガポールから帰国した僕は空港からまず母さんの入院している病院に向かった。

「そうだったのね、明《めい》が連絡を…」

「うん、僕さ、不謹慎だけど兄弟の中じゃ一番のしっかり者の明に頼って貰えて嬉しいんだ。」

母さんに本音を話すと

「そうね、明《めい》は自分は長女だからしっかりしなきゃってどこか無理してる部分があるのかもしれないわ。」

「うん、だね。だけどやっと頼って貰った。やっと…明に兄貴だって認めて貰えた気がするよ。」

「あなたと明はよく似てる。愛想が無いようでいてとても気遣いが出来るところ。」

母さんがしみじみ言う。

「似てるって…当たり前じゃん。僕の妹だもん。」

今の僕は胸を張って言える。

明だけじゃない。

聡《さとし》にしても叡《あきら》も智《とも》も…そして愛《まな》も。

みんな大事な僕の兄弟であり、そして母さんも含めて大事な家族だ。

「と言う訳で母さんが退院するまで僕が家の事とかやるから安心して。」

「尊…、でもあなた学校は?愛《まな》の事なら病院内の託児所が昼間だけでも特別に預かって貰えらるって事だから無理しなくていいのよ。それに…もうすぐ卒業でしょ?…いいの?会わなくて…」

母さんの顔を見れば誰のことを言ってるのかが伝わってくる。

「うん…大丈夫。ちゃんと考えてる。」

彼女への気持ちはハッキリしている。

けれどそれを伝えるのは今じゃない。

きっと…まだ岡ちんへの気持ちがある彼女にこの思いをぶつけてもきっと困るだろうし。

このまま卒業式まで顔を合わさない方が良い。

何より今は母さんとチビ達の事、しっかりやらないと。

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