毎日、失恋。
僕は何とか僅かに残る理性を総動員して言葉を続けた。

「佐奈の事をずっと見てた。この教室で。岡ちんを見つめる佐奈に目を奪われたんだ。まともに恋をしてこなかった僕は恋をする佐奈に恋をした。最初から失恋だったけどね。」

と自虐的に笑ってみる。

「八神くん…」

「本当は僕から佐奈に伝えたかった。それと…佐奈を守ってやれなくてごめん。」

もう一つの心残り。

佐奈が一部の女子から受けてた嫌がらせから守ってやれなかったこと。

最終的に離れる事でしか守れなかった。

そのせいで僕は、いや、僕と佐奈は複雑な思いを抱えたまま数カ月を過ごしたのだから。

「八神くん。私、嬉しかった。八神くんが私を見放すことなくずっとずっと向き合ってくれたこと。だから、私…八神くんにこの思いを伝えようって勇気を貰ったもん。八神くんのことがーーー」

「佐奈…駄目だよ。今日は僕が伝える番。そうだ、これ受け取って。小さくて…恥ずかしいけど。」

僕は式の前にロッカーに入れておいた小さな小さな花束を佐奈に渡した。

母さんに言われたからって訳じゃないけどたまには親の意見に素直になるのも悪くないかって。

実際、僕から花束を受け取った佐奈は花以上に明るくふんわりと優しい笑顔を僕にくれる。

母さん、グッジョブ。

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