耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー



キッチンに立った怜は、冷蔵庫の前に立ち三秒ほど間を置いてからその扉を開いた。
冷蔵庫、冷凍庫、野菜室、と上から順に開けながら必要な物を手早く取り出し、それら全てをキッチンに置いてある丸いテーブルの上に並べる。

「さて、作りますか。」

黒いエプロンを付け、腕まくりをした手をしっかり洗うと調理開始だ。

調理を始めた怜の手つきに迷いは見られない。料理レシピなどのサイトの動画のようにスムーズだ。
包丁を持つ手も慣れたもので、早い上に大きさも揃っていて、それらの食材は鍋やフライパンの中で次々に料理へと変化し始める。

(怒ってはいない様子でしたね…)

動きを止めることなく料理をしながら、怜は美寧のことを考えていた。

玄関を開けて美寧の姿が見えなかったほんの少しの間、怜は彼女が美寧が自分のあるべきところに戻ってしまったのではないかと頭に過ぎった。
もしかしたら美寧自身にとってはその方がいいのかもしれない。出ていく彼女を引き留める権利は、今の怜にはない。

一緒に暮らし始めて、まだたったの一か月。それなのに、美寧は既に怜の生活の一部となってしまっている。
いつも美寧は怜の帰宅知ると、玄関まで飛んでやってきて嬉しそうに「おかえりなさい」言う。食事を出せばどんなものでも「美味しい」と言い、どんな小さなことにも「ありがとう」と口にする。そして必ず花がほころぶような笑顔を浮かべるのだ。

(最近のミネは、ずいぶん明るい顔をするようになりましたね。)

ここに来た当初、彼女の表情は曇りがちで、怜にも遠慮があった。今のように屈託のない笑顔を見せるようになったのは、いつごろからだったろうか……。

その疑問に答えが出る前に、料理の方が先に出来上がっていた。


< 10 / 353 >

この作品をシェア

pagetop