耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー

***


「ここに横になりなさい。」

美寧をソファーの上に下ろすと、その男性は店の奥へ入っていった。
言われた通りにソファーに横になった美寧の視界に、自然と店内の様子が入ってくる。

(ここは……喫茶店?)

店は閉店中のようで誰もおらず静かだ。電気は付いていないが、出窓から入ってくる明かりで十分明るい。

ミネが横になっている場所から二つのテーブル席とカウンター席が見える。喫茶店としては小さい方だろう。

ぼうっと上を見つめていると、天井に取り付けられているシーリングファンが回り始めた。

「さ、これを飲んで。」

戻ってきた男性が美寧にグラスを差し出す。起き上がってそれを受け取ると、美寧はグラスに口を付けた。

ゴクゴクとグラスの中身を飲む。喉を冷たい感触が落ちていき、スーッと体に浸み込むような感覚があった。

「熱中症の初期症状だな。」

空になったグラスを受け取りながら、彼はそう言った。

「お代わりを持ってくる。」

背の高い後姿を見送りながら、美寧はさっきより少し体が楽になったことに気付いた。

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