耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー


マスターと二人で思い出話に花を咲かせていると、入口のカウベルがカランカランと音を立てた。
反射的に立ち上がり「いらっしゃいませ」とそちらを見る。入って来た人に美寧は思わず目を見開いた。

「おっ。噂をすれば、だな。」
「れいちゃん!!」

同時に発せられた声に、今しがた入ってきた人物が軽く眉を上げる。

「いらっしゃい。」

「こんにちは。」

マスターに挨拶を返した怜は、そのまま数歩で美寧のところまでやってきて、隣のスツールに腰かける。

「い、いらっしゃい、れいちゃん。お仕事はいいの?」

「ええ、ひと段落したので、息抜きにコーヒーを頂きに来ました。」

「そっか。」

「ブレンドをホットでお願いします、店員さん。」

首を少し傾けながら薄い唇を少し上げ、美寧を見る。

「は、はい。……マスター」

注文を通そうとマスターの方に目を遣ると

「はいはい。」

すでに準備に入っていた。

「美寧はまだ休憩でいいからな」

「え?」

「まだカフェオレが残っているだろ。」

「…はい。」

「ついでにそこの客の相手をしてやれ。」

美寧の隣にちらりと視線を遣ったマスターはそれだけ言うと、コーヒーを淹れる為後ろを向いてしまった。
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