耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー

***


准教授室でひとしきり竹下の質問に答え、今後の実験の問題点や注意点を指摘し終える。

「ありがとうございました。」

竹下は今どきの青年にしては礼儀正しい。そんな彼はお辞儀をした後、腕時計を見て目を丸くした。

「うわっ、もう一時過ぎだ!先生、お昼はもう食べられましたか?」

「いえ、これからです。」

「そうなんですか…すみません、俺、タイミングが悪かったですよね…」

『自分が来たせいで藤波准教授の昼食が遅くなってしまった』と思った竹下は、申し訳なさそうにしている。

「構いません。」

研究室の学生への指導は怜の仕事だ。
“夏休めない”この時期には、“昼休み”という明確な区切りも存在しない。

「先生は今日もお弁当ですか?」

「ええ、そうです。」

「もしよければ俺もお昼を一緒に食べてもいいですか?」

怜は一度だけ瞬きをした後、「構いませんよ」と了承した。


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