耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー

怜と一緒にキッチンに立つ美寧はいつもとても楽しそうだ。
怜の作業を隣で見ているだけのことも多いけれど、「どうしてそうするの?」「それは何?」と質問したり、怜の包丁さばきを見て「すごーい」と感動したりと、退屈するということはない。

誰かとこうして並んで料理をすることは、もうここ何年もしていない。最後に誰かと一緒に料理をしたのは、数年前に学生時代の友人が訪ねてきた時以来。ずっと一人だったこの家に自分以外の誰かの気配がある。しかもずっと昔からそうだったかのように感じてしまうのが不思議で、でも心地良い。

怜にとっても美寧と一緒にキッチンに立つのは、心安らぐ楽しいひとときだ。


「もうそれくらいで良いですよ?」

美寧が持っているボウルの中を覗いて声をかけた怜は、ボウルの中身をレードルで蓋つきの瓶と小ぶりなグラスの計八個に()いでいく。
それを冷蔵庫の中に入れていると、後ろから控えめな声が上がった。

「れいちゃん、ちょっと少なくないかなぁ……」

不安そうな声に怜は忍び笑いを漏らす。それもそのはず、冷蔵庫の中にしまった容器の中には半分ほどしかムースが入っていない。

「まだ終わりではないのですよ?」

「え?」

「もうひと仕事あります。頑張ってくださいね?ミネ」

「んん?」

美寧は猫のような瞳をくりくりと大きくする。長い睫毛をパタパタと二度ほど動かしてから小さな頭を斜めに(かし)げる。

「今度はこれです」

コンロ下の収納を引き出した怜が、一つの鍋を取り出した。

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