耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
「あ、それ」

「はい」

怜が手にしているのは片手の雪平鍋。そう、以前肉じゃがを作ろうとした美寧が焦がしてしまったものである。

「ピカピカだね」

使い込まれた雪平鍋の底は、真っ黒こげだった過去があるとは思えないほど銀色に光っている。

「実験が成功しましたので」

「すごい!どうやったの?」

「お酢を少しだけ入れた水を沸かして、ある程度大きな焦げを落としたらあとは日に当てるだけです」

「おひさまに当てるの?」

「はい」

「すごいね……」

「はい。太陽光には様々な作用があって、昔から人間の生活になくてはならないものなのです」

「うん。でも、おひさまもすごいけど、れいちゃんもすごいよ?」

「そうですか?ふふ、ありがとうございます」

手に持っている雪平鍋に水とレモン汁を入れ、火にかける。ひと煮立ちさせた後、先ほどと同じようにゼラチンとハチミツ、そしてヨーグルトの水切りで出たホエーも加えていく。
それを美寧が混ぜ、混ぜ終わったところでバットに入れて冷蔵庫にしまった。

「あとは冷えて固まるのを待ちます。固まったら仕上げをします」

「どれくらいで固まるの?」

「二時間ほどだと思います。その間にお風呂に入ってきたらどうですか?」

「うん。じゃあお先に入ってくるね」

「いってらっしゃい」

怜に見送られ美寧は風呂へ向かった。




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