耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
美寧は誰かと付き合ったこともなければ、これまで誰かを好きになったこともない。だから昨日のキスの意味も当然分からない。
「マスター…」
「なんだ?」
「大人の男の人って、恋人じゃなくてもキスするんでしょうか……」
「……っ」
美寧の唐突な質問にマスターは声を詰まらせ、なぜかくるっと反対を向いてしまった。その為、彼が「あいつ…」と憎々しげに呟いた声は美寧には届かない。
美寧の隣で奥さんが大きな溜め息をついた。
「美寧ちゃんは、彼のこと嫌い?」
「嫌いなんて…そんなことありえません。」
「でしょうね。じゃあ、彼とのキスは嫌だった?」
ストレートな聞き方に、美寧の顔が真っ赤に染まる。怜とキスをしたと言わなかったのにばれてしまっている。
「…嫌……じゃなかった、です。」
小さな声でそう答えた美寧に、ホッと息をついた奥さんは
「じゃああとは本人に同じことを訊いてみたらいいわ。」
「同じことを?」
「そう。『大人の男の人は恋人じゃない人にキスするのか』って。」
「………」
「もしあなたが納得できない答えが返って来たら……。」
「返って来たら?」
「うちに来たらいいわ。空いている部屋、あるわよ。」
そう言った彼女は眼鏡の奥から素敵なウィンクを送ってくる。カウンターの奥では、マスターが無言で頷いていた。