耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
「―――残念だったな」

何が、と聞き返す必要はない。

聡臣(あきおみ)も中二だ。忙しいのだろう」

祖父の言葉に素直に頷くことが出来ず、きゅっと唇をきつく結んだ。

そんな美寧を見て眉を下げた祖父は、その大きな手をそっと美寧の肩に回し、自分の体へと優しく引き寄せる。美寧の肩を軽く叩くように撫でる祖父の手。大きくて分厚い手には沢山の深いしわが刻まれている。美寧はそのしわしわの手がとても好きだ。

「分かってるもん……お兄さまはお勉強と、ぶかつ(・・・)せいとかい(・・・・・)でお忙しいのくらい」

大人ぶった言葉を並べてみるけれど、その口はアヒルみたいに突き出ているし、声の調子からも明らかに拗ねているのが見て取れる。
けれど祖父はそれに関しては何も言わずに、美寧の肩を撫で続けてくれた。

「正月にはちゃんと会えるだろう?」

「……お正月はここ(・・)じゃないもの」

年に一度、年末年始は自宅に戻る。兄に会えるのは、夏休み以外はその時だけだ。

頬を膨らませて小さく呟いた美寧は、両手に抱えた膝の中に顔を(うず)めてしまった。


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