耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
***


祖父との暮らしは、美寧が二十歳を迎えた年まで続いた。

祖父の家から中高一貫の私立女子校に通った美寧は、卒業後は進学せず祖父の家で一緒に過ごしていた。

八十をとうに越した祖父は、近頃では前のようにどこもかしこも元気とはいかず、美寧はそんな祖父を気遣いながら暮らしていた。

食事は通いの料理人である内堀(うちぼり)謙輔(けんすけ)、家事は家政婦の有村(ありむら)歌寿子(かずこ)が担っている。
立ち上がる祖父に手を貸したり頼まれた用事をしたり、彼の体調を気にするのは美寧の役目だった。


(二十歳になっても、お父さまに戻って来いとは言われない……)

実際に戻ってくるように言われたとしても、年老いた祖父を残して戻れるのかと問われたら無理だと思う。

けれど、「帰ってきてほしい」と父親に求められないことに、美寧はひそかに傷付いていた。


そんな頃だった。

祖父が突然倒れたのは。





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