耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
***
ふらふらと吸い寄せらせるように紫陽花に足を向ける。
立ち上がった時によろめいたのは、長い間座り込んでいたせいかもしれない。
楠木の根元から離れるにつれ、美寧の体を雨が濡らしていく。けれどそれにまったく気づいていないかのように、美寧は頬を伝う雫を拭うこともせず、紫陽花の茂みの前に立っていた。
祖父が帰らぬ人となったのも、紫陽花の盛りの頃だった。
雨に濡れる紫陽花はとても美しい。けれど同時に、もう二度と会えない大事な人を思い出させて、胸が苦しくなる。
(おじいさま………)
胸をきゅっと握る。握りしめた手の甲の上をいくつもの雨粒が滑っていく。
祖父が亡くなったあと、生家に戻った美寧を待っていたのは、ただ広いだけの空虚な箱だった。
生家である父の家。
父は仕事で毎日遅くまで帰ってこない。時には泊まり込みのこともあり、出張で家を空けることも多い。
社会人になった兄は、今は仕事で海外に行っている。祖父の葬儀の時は会うことが出来たけれど、四十九日も終わらないうちに慌ただしく戻って行った。
食事やその他の家事は、父に雇われた専門家がいるから困ることはない。
美寧は彼らの邪魔にならないように、ただ息を潜めてそこにいるだけ。
祖父の家も父の家と同じように雇われた人々が出入りする家ではあるけれど、祖父の家の方は働く人みんなが家族のように和気あいあいとしていた。大抵は美寧の祖父より少し若いくらいの人が多く、皆が美寧を自分の子や孫のように可愛がってくれたのだ。
父の家でそれはない。皆自分の職務に真面目で、美寧に構う者はいない。
まるで自分を必要とする人間なんていないような孤独の中、美寧は祖父を亡くした悲しみに必死に耐えていた。
けれどいつか、父に必要とされる日が来るかもしれない。その時が来たらちゃんと役に立てるようにならないと。
そう考えていた。
ふらふらと吸い寄せらせるように紫陽花に足を向ける。
立ち上がった時によろめいたのは、長い間座り込んでいたせいかもしれない。
楠木の根元から離れるにつれ、美寧の体を雨が濡らしていく。けれどそれにまったく気づいていないかのように、美寧は頬を伝う雫を拭うこともせず、紫陽花の茂みの前に立っていた。
祖父が帰らぬ人となったのも、紫陽花の盛りの頃だった。
雨に濡れる紫陽花はとても美しい。けれど同時に、もう二度と会えない大事な人を思い出させて、胸が苦しくなる。
(おじいさま………)
胸をきゅっと握る。握りしめた手の甲の上をいくつもの雨粒が滑っていく。
祖父が亡くなったあと、生家に戻った美寧を待っていたのは、ただ広いだけの空虚な箱だった。
生家である父の家。
父は仕事で毎日遅くまで帰ってこない。時には泊まり込みのこともあり、出張で家を空けることも多い。
社会人になった兄は、今は仕事で海外に行っている。祖父の葬儀の時は会うことが出来たけれど、四十九日も終わらないうちに慌ただしく戻って行った。
食事やその他の家事は、父に雇われた専門家がいるから困ることはない。
美寧は彼らの邪魔にならないように、ただ息を潜めてそこにいるだけ。
祖父の家も父の家と同じように雇われた人々が出入りする家ではあるけれど、祖父の家の方は働く人みんなが家族のように和気あいあいとしていた。大抵は美寧の祖父より少し若いくらいの人が多く、皆が美寧を自分の子や孫のように可愛がってくれたのだ。
父の家でそれはない。皆自分の職務に真面目で、美寧に構う者はいない。
まるで自分を必要とする人間なんていないような孤独の中、美寧は祖父を亡くした悲しみに必死に耐えていた。
けれどいつか、父に必要とされる日が来るかもしれない。その時が来たらちゃんと役に立てるようにならないと。
そう考えていた。