耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
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「ただいま。――あっ。」
小さく口にしてから、玄関の靴に目が入った。
(れいちゃん、帰ってる。)
いつものようにバイトを四時に終わらせた美寧は、途中公園の中をぶらぶらと散策してから帰宅した。
平日の今日。いつもなら五時にもならないこの時間に美寧が帰宅しても、怜はまだ大学で仕事中だ。
今日もそのつもりで帰って来た美寧には何の心づもりもなく、三和土にそろえられた革靴を見て、固まってしまった。
「おかえりなさい、ミネ。」
キッチンの引き戸を開け怜が顔を出す。
「公園に寄って来たのですか?暑かったでしょう。お風呂、すぐに入れますよ。」
私服に黒いエプロンの彼は調理中らしい。引き戸からこちらには出て来ずにそう言ってすぐにキッチンに戻っていった。
バイトに行く前よりは落ち着きを取り戻した美寧だが、やっぱり怜を見ると顔が赤くなってしまう。
美寧は怜に言われた通りに、速攻で風呂へと向かった。
「いただきます。」
ダイニングテーブルで怜と向かい合った美寧は、そう口にすると箸を取って自分の前に置かれた皿を見た。
今日のメニューは、アジの南蛮漬に長芋とアボカドのわさび和え。箸休めの胡瓜の浅漬けと豆もやしのナムルは、怜が作る定番の常備菜だ。
綺麗なガラスの皿にどれも少量ずつ、小さくこんもりとに盛りつけられている。大葉が敷いてあったりミニトマトが添えられてあったりと、上品且つ綺麗な見た目と器のガラスが涼しげだ。
皿の向こう側には吸い物椀。丹生麺仕立てのお吸い物だ。
食べ盛りの男子高生なら一分とかからず食べ終わるだろうその量は、食の細い美寧にとって負担にならないよう、且つしっかりと栄養が採れるように怜によって計算されたものだった。