耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー

(キスのこと、訊けそうにないかもしれません。奥さん……)

べっ甲色の眼鏡を掛けた優しいその人に、心の中で美寧がそう問いかけた時、怜がふと顔を上げた。

目が合った。ばっちり、視線が交わってしまった。
一瞬で顔が熱くなった。

盗み見見ていたのがバレて居た堪れない。それより何より、あれから彼と目を合わせるのはこれが初めてなのだ。恥ずかしくて堪らなくて、美寧が慌てて視線を逸らそうとしたその瞬間。

フッと困ったように眉を下げ微苦笑を浮かべた怜に、美寧は目を丸くした。

あれから初めて見る怜の“普段通りじゃない”表情。

外しそびれた視線をどうしていいのか分からないまま固まっていると、怜はいつも通りの冷静な表情に戻り、口を開いた。

「ミネはもうお腹いっぱいですか?」

「え?」

きょとんとする。
手元の皿を見ると、ほとんどの料理があと少しずつになっていて、このまま全部食べきればちょうど良い腹具合になることは必然だ。

「……うん。」

「そうですか。…今日はデザートもあるのですが、少しだけでも入りそうにないですか?」

「デザート!?」

食の細い美寧とて、女子の端くれ。デザートが別腹なのは道理。

「食べる、食べたいっ!」

さっきまで黙ったままだった美寧の、勢いのよい返事に、怜はにっこりと微笑んだ。

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