耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー

リビングで待っていてください、と怜に言われた美寧は、言われた通りに大人しく待っている。まだ二人きりになるになることに緊張してしまう美寧は、ソファーの隅にちょこんと腰かけて若干落ち着かない。
けれどそれとは裏腹に、頭の中では怜の言ったデザートのことが気になって仕方ない。

(今回はなんだろう、れいちゃんのデザート。)

前回作って貰ったのはマドレーヌで、その前はシフォンケーキ。最初に食べたのはカラメルプリンだった。

怜は普段はあまりお菓子の類は作らないのだが、たまに出てくるそれはとても美味しい。
有名パティスリーで買ったものやホテルのレストランで出されたものと比べたら、きっとそちらのほうが美味しいと大半の人が言うだろう。
けれど、怜の作ったお菓子は美寧にとってどこかホッとするような、懐かしいような、食べると自然と笑顔になる、そんな味なのだ。

「お待たせしました。」

カタン、と置かれたトレーの上に乗っているのは、カクテルグラス。
琥珀色をしたその底には、緑っぽい何かの実が小さく切って入っている。

「これ……」

「梅サイダーゼリーです。」

「梅サイダー!」

思わず歓声を上げた美寧に、怜は頷く。
その大きな瞳が一瞬できらきらと輝き出すのを、怜は見逃さなかった。

美寧より早く帰宅した怜が最初に作ったのは、この梅サイダーゼリーだった。
使ったのは自家製の梅シロップ。梅雨入り前に収穫した庭の梅を使って漬けた梅シロップは、一か月ほど経った今、ちょうど飲みごろになっている。
少し前にそれを炭酸水で割ったものを美寧に出したところ、いたく気に入ったようだった。
昨日の夕飯の時にも喜んで飲んでいたのを見て、きっと気に入ってくれるのではないかと帰宅してからすぐに作って冷やしておいたのだ。

「……食べても、いい?」

「もちろんです。」

小首を傾げて尋ねる美寧に、怜は即答した。その愛らしさに涼しげな目元が自然と緩む。

美寧はカクテルグラスの脚を左手でつまみ、右手に持ったスプーンをそっとグラスの中に差し入れた。
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