耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー

流しに皿を置くと怜は残しておいたパンケーキの生地を冷蔵庫から取り出し、フライパンを再度火に掛けた。

(そう言えば、ここに来た当初のミネはコンロの付け方すら知りませんでしたね。)

初めのころ、“家事が苦手”というレベルを超えた美寧の動きに、怜は何度も驚かされた。

世の中には料理や家事をほとんどしたことのない成人女性も沢山いると思う。けれど一度目にすれば分かるような些細なことすら、美寧は当たり前のように知らなかった。怜が教えればすぐに覚えるから、“出来ない”のではなく“知らなかった”のだと思う。目にしたこともない風だった。

(フォークとナイフの使い方や花を活けるのはものすごく上手、なんですよね……)

大半の人が知っていることを知らない代わりに、一般の人があまり出来ないことが難なく出来る。
所作の美しさ。季節の挨拶やしきたり。食事の作法。
さっきのパンケーキも、フランス料理のフルコースの一部かのように、フォークとナイフで綺麗に食べていた。彼女が切ったパンケーキは皿の上に欠片が一つも残っていない。

(もしかしたらミネは良い家のお嬢様、かもしれませんね……)

そんなことを考えている間にパンケーキは焼き上がり、それを新しい皿に乗せると、冷蔵庫の中から取り出したものを次々に皿の上に盛り付けていく。最後に冷凍庫から出したものを乗せると、怜は満足そうに口の端を上げた。

(さて、俺の子猫は喜んでくれるでしょうか。)

大皿を片手に、怜は再び美寧の待つダイニングへと戻って行った。


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