耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
「ひ、ひどいよ、れいちゃん……」
「ひどい?」
「れいちゃんの分まで食べちゃったんだと思って本気で焦ったのにっ!れいちゃんに悪いって思ってる私をからかうなんて……」
心から申し訳なくて焦ったことを思い出した美寧は、からかわれた悔しさに肩を震わせながら大きな瞳にうっすらと涙を溜め、怜を睨んだ。無言で睨むことで美寧は精一杯の叛意を表す。
フォークを持った右手はまだ怜に取られたまま、自分を睨む美寧を怜は眉一つ動かすことなくじっと見下ろしている。その顔からは何を考えているのかは美寧には分からない。
もしかしたら、美寧のあまりのこどもっぽさに怜は呆れてしまっているのかも、という考えが過ぎる。
途端にさっきまでの怒りはどこかに引っ込んでしまい、些細なことで怒ってしまった自分への自己嫌悪が湧き上がる。
美寧は怜から視線を外すと、自分の足元へと視線を落とした。
ものの数分の間にめまぐるしく変化する自分の感情に振り回されてしまい、美寧の怒りはやるせない悲しみに変化した。
美寧の瞳に集まった水膜が、雫になって溢れ出しそうになった。