耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー

「泣かせるつもりじゃありませんでした…」

申し訳なさそうな声でそう言われ、「泣いてない」と反論しようと顔を上げた―――が、声は出なかった。

ぶつかった瞳が、とても甘かった。

顔を上げたまま動きを止める。縛られたように体が動かない。動かない体とは真反対に心臓は速度を増していく。

この時になって初めて、美寧は自分が怜の膝の上に横抱きにされていることに気が付いた。

「あなたがあまりに可愛いから、食べるつもりはなかったのに欲しくなったのです。」

細めた瞳が蕩けそうなほどに甘い。

「そんなに喜んで美味しそうに食べてくれるなら、きっとどんなに甘くても俺にも食べられるかも、と思ったんです。」

怜は片手で美寧の頬をそっと包むと、親指で下唇のきわをスッと撫でた。
美寧を見る怜の瞳は蠱惑的で、その美しさに吸い込まれそうになる。

「でも、ミネも悪いのですよ?」

ここに来て“ミネも悪い”と言われ、美寧はピクリと肩を揺らした。

(私も悪い……?)

いったい自分の何が悪かったのだろう。小首を傾げるが全く分からない。

そんな美寧の様子に、怜はふぅっと腹の底から息をついた。

「これだから……無自覚は困るな。」

(むじかく?)

美寧が頭の中でそれを変換する前に、怜は言葉を続ける。

「好きな人から何の他意もなく『大好き』と言われた俺の、心中を忖度してください。」

「っ、」
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