旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
なんか不思議な感じがする。あの俊也さんとこうして並んでキッチンに立っていることが。だけどそれを言ったら、結婚したこと自体がいまだに信じられないかも。
尊敬していた上司と夫婦になったのだから。

でも家に帰ると誰かがいるって、やっぱり嬉しいな。

亡くなったお母さんとふたりで暮らしていた頃は、これが当たり前だった。学校で嫌なことや落ち込むことがあっても、家に帰ってお母さんと過ごすと自然と忘れられていたよね。

今だってそうだ。俊也さんが料理を作ってくれていたことが嬉しくて、気持ちが軽くなった。また頑張ろうと思えるから。

「なぁ、芽衣。今はまとまった休みが取れないから行けないが、結婚式を挙げたタイミングで新婚旅行にも行こうな」

「え、新婚旅行ですか?」

手を止めて横を見ると、彼の唇は優しい弧を描いた。

「あぁ。普通の夫婦がやることを全部していこう。結婚式に新婚旅行。休日にはふたりで出掛けて、思い出をたくさん作っていきたい。それにこうして日常生活もできるだけふたりで過ごしたい」

俊也さん……。
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