旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
相手を確認すると、都内で一番売上が良い店舗からだった。

「お疲れ様です、姫野です」

すぐに電話に出ると、電話越しから店長の焦った声が聞こえてきた。

『お疲れ様です。あの、申し訳ありません! 実は明日、特注で受けていた商品があるのですがその……発注をかけるのを忘れてしまいまして』

嘘でしょ、忘れたなんて。しかも明日!?

『本当にすみません!』

ひたすら謝る店長に怒りが込み上がったものの、グッとこらえる。今は受けた特注の商品をどうにかすることが先決だ。

「特注を受けた商品と数を教えてください。 それと今、店に在庫はどれくらいありますか?」

特注を受けたのは、リップや制汗剤。どうやらイベントの景品に使用するようで、それぞれ三十五個ずつ注文を受けたとのこと。

店に少し在庫があるようだから、都内の店舗からかき集めれば間に合うはず。

「私が今から都内の店舗を回って集めますので、店長は各店に在庫数を確認してもらってもいいですか? 在庫の多い店舗がわかったら連絡ください」

『わ、わかりました!』

電話を切り、荷物をバッグに詰め込んでいく。

「姫野さん、大丈夫? なにかトラブル?」

ただならぬ私の様子を見て、先輩が心配そうに声を掛けてくれた。
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