旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
もし……もし、本当に彼女の言うように忘れられない女性がいるのなら、この部屋にその女性のものがあるかもしれない。

だめだとわかっていても、止められなかった。だって気になるから。なにより安心したい。

彼女の話はすべて嘘だって。今日まで俊也さんと過ごした日々を、彼がくれた言葉を信じたい。

書斎の明かりを灯し、改めて室内を見回した。

きちんと整理整頓された机回り。本棚は仕事関係のもので溢れていた。見たところ、女性の存在を確かめるものはなにもない。

ゆっくりと机の方へ向かう。

写真立てなど飾られていないし、やっぱり嘘だったのかもしれないけど……。

手にしていたバッグを机の上に置き、恐る恐る引き出しを開けると、そこには小物入れがあった。

「なんだろう、これ」

手に取り蓋を開けた瞬間、目を見開いた。

そこには指輪とたくさんの写真、それと一通の手紙が入っていたから。

一枚の写真を手に取ると、今より若い俊也さんと幸せそうに寄り添う女性が写っている。他の写真も、その女性と写っているものばかり。幼い頃の写真もある。
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