旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
もし……、もし俺が姫乃立場だったらどうだろうか。自分の身体のことはしっかり把握したい。

残された時間が少ないかもしれないなら、悔いのないように一日一日を過ごしたいと思うはずだ。だけどそれはあくまで俺の考えであって、姫乃もそうとは限らない。知らない方がいいこともある。

ただ彼女を見つめ返すしかできずにいると、長年一緒にいた姫乃には俺の気持ちが伝わってしまったのか、唇を噛みしめ俯いた。

「やっぱり私、重い病気なんでしょ……?」

「ちがっ……!」

ボソッと呟いた姫乃に、かけてやる言葉が見つからず口籠る。

正解はどれだ? このまま嘘を突き通すべきなのか、真実を告げるべきなのか……。

答えにたどりつけずにいると、姫乃はすがるように俺に抱きついた。

「俊也はこの先もずっと、私のそばにいてくれるよね……?」

声を詰まらせながら問われた質問に、彼女の身体を抱きしめた。

「もちろん。だって俺たち、大学を卒業したら結婚するんだ。なにがあっても姫乃を離すつもりはないから」

そうさ、この先の長い人生を共に歩んでいくんだ。彼女の病気は長い人生の中の通過点に過ぎない。

「いつか姫乃が手術したことも、そんなことがあったな、大変だったなって思い出話にできる日がくるさ」

「……うん」
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