旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
正しい答えなどわからない。でもひとつだけたしかなことがある。なにがあっても、姫乃のそばを離れないということ。

少しすると姫乃は顔を上げた。

「俊也、お願いがあるんだけど」

「なに? どんなワガママでも聞いてやるよ」

彼女の髪を撫でながら聞くと、姫乃はほんのり頬を赤く染めた。

「ふたりでなにかお揃いの物がほしい」

「え、お揃いの?」

「うん。……今は面会時間しか会えないでしょ? 会えない時間、俊也とお揃いの物を身につけていたら、寂しくないから」

「姫乃……」

恥ずかしそうに俺を見る姫乃が愛しくて、そっと唇を塞いだ。

唇を離すと、彼女は頬を膨らませる。

「……もう、俊也ってば。ここは病院だからね?」

なんて言いながら、どこか嬉しそうに話す姫乃が可愛くてたまらない。

「悪い、姫乃が可愛くて我慢できなかった」

よりいっそう抱きしめる力を強めた。

「指輪でもいいか? お揃いの物は」

「え、指輪?」

「あぁ」

彼女の左手を取り、薬指を撫でた。
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