旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「ここにお互いつけよう。……近い将来つけるんだ、それが早まってもいいだろ?」

「……うん!」

その日のうちに俺は、高価なものではないけれどペアリングを購入し、次の日姫乃にプレゼントした。

彼女はとても喜んでくれて、しばらく指輪を眺めてばかりだった。

その後、姫乃の手術は行われ、八時間にも及ぶ手術は無事成功。しかしやはり完全に腫瘍を取り除くことは叶わず、放射線と抗がん剤による治療が開始された。

この頃になると、両親は隠しきれずに姫乃に本当の病名と余命を伝えた。

俺もその場に同席したが、姫乃は自分の身体のことを把握していたのか、「やっぱりそうだったんだ」と力なく呟いた。

でも、「精いっぱい生きるよ」と笑顔で俺たちに誓ってくれた。

だが、日に日に症状は悪化の一途をたどり、寝ている時間が多くなっていった。

目が覚めても意識が朦朧とすることもあり、受け答えがうまくできなくなり、医者からその時が近いことを告げられた。
< 185 / 262 >

この作品をシェア

pagetop