旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「姫乃……」

ベッドに横になり、固く目を閉じたままの彼女の手を強く握りしめた。するとゆっくりと目を開けた姫乃は俺を見て微笑んだ。

「俊也、大学は……?」

開口一番に出た言葉に、思わず笑ってしまった。

「大学より姫乃のそばにいたいんだ。昴もあと少ししたら来るよ」

今は大学になど、行っている場合じゃない。一分一秒だってそばにいたい。

「……だめだよ、俊也。ちゃんと行かないと。……だって俊也は、おじさんの会社を継ぐんでしょ? ……お願いだから、しっかり通って」

彼女の手を強く握りしめた。

「わかったよ、約束する」

すると姫乃は安心したように微笑む。

「それと、前言ったこと……忘れて」

「……え?」

前言ったことって……。

「ずっと私のそばにいなくてもいい。……俊也には俊也の人生を、楽しく生きてほしい」

「姫乃……」

なんだよ、それ。……これじゃまるで最期の別れみたいじゃないか。

「なに言ってるんだよ、なにがあっても離すつもりはないって言っただろ? 忘れないでくれ、俺が生涯愛する女性はお前だけだから」

姫乃以上に好きになれる相手など、一生現れないさ。
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