旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「ふふ、ありがとう。……その言葉だけで私は充分。こうして俊也や昴、たくさんの友達と出会えて、私は幸せ」

笑う姫乃の瞳からは、涙が零れ落ちた。

「指輪も嬉しかった。……ありがとう、俊也。大好きだよ」

それが俺が聞いた姫乃の最期の言葉だった。

再び静かに眠り始めた姫乃は一週間、昏睡状態が続き、最期は俺や両親、昴にたくさんの友達に見守られながら静かに息を引き取った。

彼女がこの世界からいなくなった瞬間、目の前が真っ暗になった。

もう二度と目を覚まさないなんて信じられなくて、だけど時間が経つにつれて冷たくなっていく姫乃の体温に、嫌でも今が現実なんだと思い知らされた。

それからしばらくのことは、今でもよく覚えていない。

姫乃の葬儀には参列できなかった。姫乃と約束をしたのに大学にも行かず、家に引きこもった生活を続けること一ヵ月。

姫乃の両親が俺を訪ねて来た。ふたりから渡されたのは生前、姫乃が俺に残した手紙だった。

そこには俺に対する感謝の想いと、自分がいなくなってからの俺を案ずることが書かれていた。

彼女が最後に紡いだ想いを声にして読み上げていく。
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