旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「私には無理だった大学を卒業して、社会人になって。お酒も飲んで人生を謳歌してほしい。俊也には私の分まで幸せに生きてほしいの。……でも私がいなくなって少しは、ひとりでいてほしい。簡単に他の人に乗り換えたりしないでね?……か。姫乃らしいな」

文面から彼女らしさが伝わってきて、こんな時なのに笑ってしまった。

「だけどいつか絶対に、私以上に好きになれる相手と出会ってほしい。……私が愛したのは生涯俊也、ただひとりだけ。だから私はいつだって俊也のそばにいて、見守っているからね」

ポロポロと零れ落ちた涙。必死に拭っても次から次へと溢れて止まらない。

姫乃は、どんな思いでこの手紙を俺に残してくれたんだろう。自分が一番辛い時に、俺の心配をさせてしまっていたかと思うと、自分が情けなくなる。

「ごめんな、姫乃」

きっと今、近くで俺のことを見て呆れているよな。

ゴシゴシと涙を拭い、大きく深呼吸をした。

「姫乃との約束、絶対守るよ」

明日から大学に行こう。しっかり卒業して社会人になる。姫乃ができなかったことを、全部俺がやるから。
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