旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
声を絞り出すと、お兄ちゃんに抱きしめられ、お母さんに強く手を握られた。

本当はいつだって私は、家族の輪の中に入ることができたんだ。こんなに温かいぬくもりに、手を伸ばせば触れることができたんだ……。

以前使っていた私の部屋は、当時のまま綺麗な状態を保っていた。後でお兄ちゃんから聞いたら、お母さんが家政婦さんに私の部屋も、毎日掃除するように頼んでいたらしい。

家に帰るたびに出されていた紅茶も、私が好きなものだった。いつも切らさずにストックしてくれていたようだ。

お母さんの想いに触れて胸がいっぱいになった。

久しぶりに自分の部屋のベッドで横になりながら、ずっと見られずにいたスマホを手に取る。

家を飛び出した直後に、何度も俊也さんから着信履歴が残っていた。それと一通のメッセージ文には【ごめん】の三文字が。

彼から送られてきたメッセージ文を見つめていると、また涙が零れそうになる。

私は俊也さんに謝ってほしいわけじゃない。ただ今の俊也さんの気持ちが聞きたかっただけ。

でも俊也さんと姫乃さんのことを聞いた今、彼の口から聞くのが怖い。
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